第11話 探偵クロがカイトを問い詰める?

マスターが話しかけてきた。


「クロさん、今日はカスミちゃんは?」


その言葉で2人で来ていることが変装男にわかり、話しかけにくくなったため、クロはマスターを睨んでいた。



今日、眼の前の変装男は青年の格好をしている。どんな姿が素の状態かわからないが、以前にバーに来ていたときも青年の姿だったはず。クロはそんなことを思いながら青年に変装?しているカイトをみていた。


「もうすぐ来ると思うよ。さっき僕の居場所を聞いてきたから。ここにいるって伝えといたんで。」



クロはカイトに話しかけるのを諦めてマスターと話をすることにした。話題によっては一緒に話が出来るかもしれないと、そんな淡い期待を抱きながら…


「そうなんですね。探偵の助手としては探偵を探すのも大事な仕事の一つですね」 


『あ〜。マスターのこの返答で探偵ってバレてしまった。もし眼の前の青年が犯人ならヒントはもう貰えない』



またしてもクロはマスターを睨む。気になる人物、絵画泥棒に繋がる何かが掴めそうな千載一遇のチャンスがそこにある。眼の前にある。ただ手が届かない。いや、手を伸ばしていないだけか…


『よし、話しかけよう!』

そうクロが思ったとき、バーの扉が開いた。



「クロ、発見!!」



カスミが入ってきた。クロはまたしてもカイトと接触する機会を失った。


「クロ、聴いて。美術展の泥棒対策の打ち合わせが長引いて…。案を出さずに文句ばっかり言う人がいて…、きっとアンチなんです!」


「どう思うです?」

カスミが突然、カイトに話しかけた。ナイス、カスミ!クロの顔が明るくなった。



「カスミ、急に話を振ったら迷惑だよ。」

そう言いながらクロはカスミの背中を押す。


「目に浮かびます、困りますよね。一方でアンチの人も困っている気もしました。」



「???」

カスミとクロが不思議そうにカイトを見ているとカイトが続けて話し始める。


「本人はって思っているけど周りからはと思われていると、本人はと思ってほしいから気を引くことを言おうとするけど実際には出来ないから文句に聞こえることがあって…」


「気を引くことって難しいんですよね、みんなとは違うこと言わないとって思うから。的外れになるリスク高いんですよね」



「ほんとっ、そんな感じだったです!。もしかして見ていたです?」


カスミの発言にみんなが笑いながら、バーでの時間は過ぎ、カイトが先にバーを出ていった後にはクロとカスミが残っていた。



「クロ、見えてるんじゃないです?」



カスミがクロに問いかける。何が見えたのか?

この世界では人によって時間が異なるのだが、人の財布の中身がわからないのと同じで、他人の時間の長さはわからない。しかし、クロには他人の使える時間が見える能力があり、その力で何かが見えたんじゃないかの問いだった。


「見えたよ。盗難に関係があるかはわからないが、やっぱり、前に変装して盗難現場にいた人と同じ人物と同じだ。」



「いや、正確には見えたというのは少し違って、さっきの男の使える時間だけが見えなかった。時間の増減が伝わってこない。時間を持っていないとも思える。もし、彼が犯罪をしていても時間の増減はないのかもしれない。そんな不思議な感覚がある。」


「クロ、犯罪を犯したら時間は減るでしょ。その感覚は変なのです。あと、彼は良い人だと思うです。」


「そうなんだよね。事件に関係しているが、何か掴みきれていない。そんな感じがする。」



つづく

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