第10話 探偵クロに狙われるカイト!

『たしか、バーであった男は青年だったが、今去っていった人は年配に見える。変装なのか?変装をする必要があるのか?』



クロはカイトを調べることにした。


クロは自分の探偵事務所で絵画盗難現場の写真を次々に見ている。最近は画像検索で同じ顔を選択してくれるため、見ているというよりはパソコンのデスクトップに画像を並べて、アプリに画像を次々に移して複数回現場に来ている人を検索しているだけなのだが。



『変装されていたら、ヤッパリわからないか〜』


クロは頭を掻きながら上を見上げた。盗難された場所に複数回現れている人を検索していたのだが空振りに終わっていた。


『現場で目が合ったしな〜。しばらくは現場に来ないかもしれないな。』


そう思いながら、クロは絵画ばかりが盗られていることの繋がりを考え始めていた。



『なんで、絵画ばかり何だろう…』


『食べるわけじゃないし、着るわけでもない。盗ってどうするんだ?』


お金が存在しない世界において、お金を支払う工程はなく、商品を持ち帰る行動そのものは盗難と変わりがない。



ただ、それはの場合であって売られていないものは商品ではない。絵画も例外ではなく、売っているところはある。必要ならから持っていくことでいい。


『何で売場からは持って行かないんだろう?』


クロは絵画盗難の前あたりからの絵画を置いている本屋などに絵画の売行きを聞いていた。



『絵画はそもそも人気があるとは言えず、ほとんど動きがない商品。それは以前から変わらない…、そうだよな~。盗難が発生する前後も同じで求められる量が増えているわけでもなさそうだ』


『売場じゃダメなのか?盗ったらときが減ってしまうのに…。特定の絵に秘密があるのかもしれない』



クロは盗られた絵に共通点がないかを考えているが


『わからんね~。共通点らしいものは見つからんね。しいて言うなら共通点が少な過ぎることくらい。』


『ダミーとして、関係ないものを盗っているのかな?そんな面倒なことするか?』


クロは盗難品かいがの共通点の糸口を探るが見つからずにいたが、見つからなくて当然なのだ。そもそも泥棒のカイト自身がどんな絵画がニュースになるか、見てもらっているかを知りたいないために、ジャンルを問わずにわざと異なる作品を盗っているからだ。



その点、という共通点に気づいたクロが凄いのかもしれない。


『今のところ共通点は絵画だけか。あと、気になる変装男がいること。ちょっと気分転換に呑みにいくかな』


幸い、探偵事務所には他に誰もいない。普段なら助手のカスミがいるのだが、美術展の泥棒対策の打ち合わせに出かけている。



『絵画とは関係ない美術展だから関係ないような気もするけど、犯人探しを依頼されて関わらないわけには行かないからな~』


カスミには無駄足になりそうなことを申し訳なく思う気持ちもあり事務所で待っていようと思っていたが、申し訳ないことのついでに事務所を空けることにした。



「クロ、出かけているでしょ」


出かけた瞬間にカスミからメールが届いた。クロはすぐに周りを見渡すが見られている感じはない。


「どこにいるです?そっちに向かうから」


『合流目的でのカマかけか…』

ホッと胸を撫で下ろし、メールを返す。



「いつものバーだよ。クロの巣」


「やっぱり!!後で私も行くです!」


『まだ着いていないが、まぁ伝わっているなら問題はないか。』


クロは安心してバーの扉を開けると、視線の先のカウンターに変装男が座っていた。



少し距離をとり、クロもカウンターに座る。店内を見渡す振りをして横目で変装男を見る。


『変装男は一人で来ているみたいだ。こっちも一人だから頃合いをみて、話しかけてみようかな。まさかバーで遭遇出来ると思っていなかったが、むしろ、1対1で話しかけやすく、この上ない環境になってる』



カスミにはゆっくり来てもらうようにメールをしようとしていたところにマスターが話しかけてきた。


「クロさん、今日はカスミちゃんは?」


その言葉で2人で来ていることが相手にわかり、話しかけにくくなったため、クロはマスターを睨んでいた。



つづく

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