第9話 絵画泥棒を狙う探偵がいた!
カイトはホッと安堵の表情を浮かべながら、ふと気になる言葉が耳に残った。
『時間が長くなる感じがするって!』
『もしかしたら絵画を観ていると時間が長くなるんじゃないか?』
『なんで?』
『絵に限らず、描いたものなんてそこらじゅうにある。見るもの、見えるものによって時間が長くなるものがあるってこと?』
いろんな疑問がカイトの頭を駆け巡り、謎ときをし始めていた。今、カイトは山の絵を盗って持っている。その絵を観ると時間を長くなるってことであれば自分で試してみるのが一番早いが、その方法はカイトには使いづらく効果がわかりにくいことを知っていた。
実はカイト自身が良いことをしても悪いことをしても時間が変わりにくいからだ。しばらく生活をする中でそう感じるところがあった。
『良い行いをしても翌日は他の人より時間が目に見えて増えている感じはない。絵画を盗ったときも、犯罪という悪い行いをしたにも関わらず時間が変わった感じはない。』
増えたり、減ったりしている気もするが、気のせいの範囲とも思う。良いことをしたときも他の人のようにスマホを同時に複数台同時に操れるようになったりしない。ただただカイトは支払いをせずに生活を続けていた。
『個人差があるのか?』
『お金の世界も同じような良い行いをしても手にする金額に差があるときがある。そんな感じに思える。影響力によるのか…。他に何か条件があるのか、外の世界からきたことも影響力が出にくくなっている気もする。』
そんなことがカイトの頭を駆け巡っていて謎は深まっている。今は絵を見ても時間の長さに関しての影響がわからない。それだけは確かだ。
『誰かに見せてみるか…。』
『それは犯人ですって言っているようなもんだな。無いな。』
もう少し情報がほしい。そう思い、カイトは他に絵画を持っている人を探して盗難を続けていた。絵画に対しての価値が高くないのもあり、変装しては盗難を続けていると、さすがに短期間で絵画ばかりが無くなる事件があるとニュースにもなり、人々が注目するようになってきた。
『よし、絵を盗ることで絵を見る人が増える。これで時間が増えるかが解かる。』
そう思いながら、盗難した場所の周りでカイトは人を眺めていた。もちろん変装をして。
『絵の話をしている人や、時間が増える手がかりが掴めるかもしれない…』
予想の通り、盗難された場所には連日報道している人、その周りで興味を示す人、何か動画を撮る人、いろんな人が現れているが、カイトが期待する話は出てきていない。
ふと、カイトは視線が気になり目を向けると、一人の男性がカイトを見ている。
『どこかで会ったかな?。ずっといると変に思われるから、今日は帰るかな。』
クロはカイトが気になっていた。クロは探偵をしており、絵画が連続して盗まれていることで依頼があったため現場を見に来ていた。
『さっきの人、どこかで見た気がする…』
『見たというのは少し印象が違う。何かどこかで同じ感覚になったというのが正しい表現かな』
クロは思い出そうとカイトが去るところをおぼろげに眺めていた。
『あっ、思い出した!!!』
クロは以前にバーで見かけた男と去っていく男が似ていることに気づいた。
『たしかバーであった男は青年だったが、今去っていった人は年配に見える。変装なのか?変装をする必要があるのか?』
クロはカイトを調べることにした。
つづく
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