第37話 シナリオを乗り越えて⑧

 駆ける。一刀にてこのクソッタレな運命とおさらばするべく必死に駆け抜ける。


『Nyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!』


「くっそ! 流石に簡単にはいかないかっ!」


 第六感的なもので絶対的な危機を感じたのか。

 邪神ニャルラトホテプはそうは問屋が下ろさない言わんばかりに無理矢理に体を動かし咆哮した。


 流石にアリスによる内部的拘束も限界のようだ。むしろよくここまで単なる人間が邪神を抑えたというものだ。称賛に値する。すげぇよ。

 ともかくここからは自分達でどうにかするしかない。


『Nyaaaaaa!!!』


 僕の行先を遮るように触手が殺到する。三六〇度逃げ場はない。一切の遊びも手加減もない全力全開だ。仮にも神の分際で大人気ないだろ。恥ずかしくないの?


 とはいえ不味い。今は刀を抜けない。触手を迎撃する為に抜いてしまえばせっかく溜めた魔力もおじゃんになるわけでして。


「忘れたのかにゃ? この私がいることをにゃっ!」


 鞘に収まった刀に手を添えたニャルメアが僕の前に躍り出た。


「ちょっと本気出しちゃうにゃ」


 猫猫抜刀 絶・黒死線


 そこから放たれるのは広範囲超連斬撃。開幕に放ったそれと比べより更に広範囲だ。何がちょっとだ。本気も本気。ガチじゃないっすか。


 ともかく触手は細切れにされ、視界は開けた。好機と見てそのまま速度を緩めず前に駆け込む。


「とっとと行くにゃ! モブ!!」


 ニャルメアと交差する際、バシンと背中を叩かれた。いい激励だ。不覚にもほんの少しだけ目頭の温度が上がった。


『Nyaaa!!』


 しかしそこは流石邪神。ひるまず更に僕めがけ触手を殺到させた。しつこい。


「任せてモブ君!」


 今度はリッカが僕の前に飛び出た。


「正真正銘! 最後の一撃だよーーー!!!」


 リッカが勢いよく手のひらを前に付き出す。


 サン・フォール


 開幕に放ったものと同様の魔術。それは文字通り天高く輝く灼熱の恒星を落とすような一撃。彼女の全魔力全身全霊で放ったそれは触手どころか邪神の本体そのものすら飲み込んだ。


「行って! モブ君!!」


 リッカもニャルメアに習い僕の背中を叩いた。もう魔力は底をついて、息も絶え絶えなんだろう。ハエが止まるような張り手だった。

 それでも何故か気合いが一層に増した。


 更に駆ける。


『Ny……a……a……!!』


 しかしリッカの全身全霊一撃でも邪神の動きを止めきるには至らなかった。

 邪神は紅炎プロミネンスの奔流がごとき灼熱に圧されながらも必死に触手を動かす。


「アタシのことも忘れないでよねっ!!」


 最後にこのタイミングを待っていたと言わんばかりにクラリスがドヤ顔で前に飛び出た。


即席錬金術クイック・クラフト特別版スペシャルエディション!!」


 スドオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!


 クラリスが放り投げたのは錬金術により精製された大量の簡易ダイナマイト。リッカの魔術に引火したそれは超超超絶火力を引き起こし、触手群の尽くを焼き尽くした。


「ぶちかまして来なさい! モブ!!」


 バチンと背中を叩かれた。流石ツンデレオブツンデレ。理不尽な暴力に慣れているのか良いスナップをしているぜ。


 更に駆ける。全力疾走だ。

 遮るものはもう何もない。彼女らのおかげで奥義射程圏内に無事入れた。あぁもう何もかも完璧だ。


『Nyaaaa……!!!!!』


 邪神ニャルラトホテプはその全身が触手で構成されている存在だ。その気になれば触手はいくらでもあるのだろう。リッカ達にあれだけ細切れにされ灰燼に帰されたというのに。邪神は最後の悪足掻きと言わんばかりに全身から触手を僕に向けて殺到させた。


 しかしもはやそれが僕に届くことはない。


 魔力最大解放。

 滅多に見せない全力も全力。ガチ中のガチだ。塞き止められた運河の如く溜め込んだ魔力が刀から際限なく溢れ出していく。漆黒のそれは淀み渦巻き鬩ぎ合い。超弩級の刀身を形成させた。


 最大重力式抜刀――黒断


 超弩級重力刀身は迫りくる触手ごと邪神ニャルラトホテプを胴から真っ二つに一刀両断した。






◆◆◆



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