モブ転生:どう考えてもモブでしかない僕が原因で世界が滅亡寸前なのは間違っているだろ~しかも原因はメインヒロイン達に言い寄られているせいらしい
第15話 そうだパフェを食べに行こう②《アリス・クトゥとの日々②》
第15話 そうだパフェを食べに行こう②《アリス・クトゥとの日々②》
「お待たせしやしたー」
な、なんじゃこりゃ。
「ごゆっくりっすー」
僕らが座るテーブルに運び込まれたのは何とも名状しがたいパフェだった。
アリスはイチゴ。僕は彼女の指示に従いバナナを中心としたものだ。
問題なのはサイズだ。おかしいもんこれ。なんでパフェがバケツサイズの大皿に入ってんだよ。それもみっちりギチギチ。
これ食べきれるのか……?
「これよこれ……! 期待以上だわっ!」
しかしそんなトンデモパフェを見てアリスはむしろ瞳を輝かせていた。まじかよ。クールキャラが崩れているまである。
「ではさっそくっ。ん~~~~~! 素晴らしいわっ!」
パフェをスプーンで口に運んだアリスの表情は普段では想像出来ないぐらい綻んだ。
なんだよ。滅茶苦茶可憐じゃねぇか。前世で彼女も人気キャラだっただけはある。
思わず惚れかけたんですけど。僕が弁えたモブじゃなかったら告白していたまである。
「うっ」
アリスにその食べざまに見惚れていたことがバレていたらしい。気がつけば彼女はジト目で僕のことを睨んでいた。
やべぇ。土下座か。可及的速やかに土下座をかますべきか?
「はいあーん」
!?
しかし次のアリスの行動は予想を斜め遥か上をぶち抜くものだった。大気圏を突破するレベル。
なんだ!? この恐ろしいあーんは!?
なんか知らないけど無表情でパフェをすくったスプーンを僕に向けてきてんですけど!?
この時、僕は神話でも高名な
「あーん」
更に倍プッシュかよ!?
思わず体が後ろに傾くが無駄だ。この空間内に逃げ場なんてものは存在しない。ていうか逃げたら周りから石というかパフェとか投げられそうだし。
そもそもアリスの表情からは無表情ながらも『絶対逃がさない』という確固たる意志を感じさせられた。
ええい、ままよ!
「あ、甘い」
意を決してというかやけくそにスプーンにかぶりつくと口の中に途方もない甘味が広がった。
「一応毒は入っていないようね」
「っておい」
僕のトキメキを返して欲しいね。
「ていうか君のほうが先に食べてるんだから毒味の意味ないじゃん!」
「そ、それは……アリスジョークよ」
虚を突かれたのか彼女は頬を朱色に染めてそんなことを言いやがった。
なんだよ。なんだよそれ。自分の名前を冠したジョークとかふざけてんのか。
やっぱりアリス・クトゥはズルいぐらい可憐じゃんか。
◆
「ふぅー食った食ったー」
パフェがテーブルに運ばれてから小一時間程度。僕らはその全てを余すことなく平らげた。
大変美味でした。あの量でも案外食べ切れるもんなんだね。
しかし僕は男だから分からないでもないが、アリスに関してはあの量がその細身の中に消えたのかは不思議でならないけど。女の子にとってお菓子は別腹っていうの比喩でもなんでもなく本当だったんだな。
「行儀が悪いわ。でも本当に美味しかったわね」
アリスは
君、キャラ変わってない?
「そうだね。自分から来ることなんかなかっただろうし、こればっかりはクトゥに感謝だよ」
アリスは僕の発言に何処か思うところがあったのか目をパチクリとさせた。
「どしたん?」
「いえ、そういえば自己紹介した記憶がないわ」
言われてみればそうだ。アリスは元々僕のことを知っていたようだし、僕は僕で伝家の宝刀原作知識がある。とはいえ原作知識はこの世界で僕だけのものだ。少し不味ったかな。
「なんで私の名前を知っているのかしら。もしかしてストーカー?」
「無理矢理連れてきたのにそこまで言うとか凄いやこの人」
「気持ち悪いわね。半径四万キロメートル以内に近づかないでくれるかしら」
「この星の裏側までいけと!?」
ちなみにこの世界の大きさは地球の二倍らしい。マジ半端ないし、パフェ効果消えていつもの毒舌が戻ってるんですけど。
「冗談よ冗談。貴方と違って私は有名だものね。貴方と違って」
何故二度繰り返した。
「そう。私かわいいものね」
しかも滅茶苦茶ずうずうしい。いや君にそれを言う資格はあるんだけどさ。それを物怖じけなく真顔で言い放つのはモブ的に如何なものかと思う。
「ソウデスネー」
「何故かカタコトに聞こえるのが腹ただしいわね」
そんなこと言われましても。
アリスは僕の反応に頭を押さえて溜息を吐いた。
そしてとても嬉しそうに。とても心地良さそうに。
「ふふ、ほんとおかしな関係ね」
僕の思い違いかもしれないけど、とても幸せそうに微笑んだ。
やっぱりそんな彼女はどこからどうみても完全無欠完璧鉄壁に可憐過ぎるわけで。
助けて(最近全然登場していない)原作メインヒロイン様! 僕この子に惚れちゃいそう!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます