第14話 そうだパフェを食べに行こう①《アリス・クトゥとの日々①》


「私、パフェが食べたいわ」

「はい?」


 はい?????


 心地良い風がそよぐ学園屋上。

 黒髪美少女アリス・クトゥはそんなわけの分からないこと言い放った。


「だからパフェよパフェ。頭だけではなく耳もイカれたのかしら」

「凄いや。聞き返しただけなのにここまで言うとか」


 この子は毒舌を挟まなければコミュニケーション出来ないのだろうか。僕じゃなきゃとっくに心折れてるぞ。いや僕もかなりギリ。


「なんでパフェ?」

「何よ不満なの? いいじゃない。貴方みたいな冴えない男が私のように天使みたいな美少女と行けるのよ? むしろ泣いて喜ぶべきじゃないかしら」


 そんなこと言われましても。


「喜びなさい」

「あ、はい」


 しかも追撃してきた。思わず頷いちゃったよ。


「いや行かないからね? 僕、そういう店に入ったら死んじゃうし」


 もうねその手の店って無駄にキラキラしてて僕なんかが入った瞬間にたちまち浄化させそうだもの。


「あ?」


 怖い怖い。あと怖い。


 凄いやこの子。断っただけなのにゴミを見るような視線を向けてくるんですけど。


「そう、いい度胸ね。でもいいのかしら。ここで叫び声を上げて社会的に抹殺するわよ?」


 こえーよ。いちいち怖い。

 もちろんこの世界でも女性の権利はアンバランスに強い。前世と同じく貴族でもない限り、痴漢冤罪に巻き込まれなどしたら回避不可能なのだ。その真偽は別として確実にお縄につくことになるだろう。


「はぁ、分かりました分かりましたよ。行けばいいんでしょ行けば!」

「殊勝な心掛けね。初めからそうそればいいのよ」


 アリスは満足そうに微笑を浮かべた。


 はぁ……女の子って相変わらずよく分からないわ。僕なんかとそんなところに行って何が楽しいんだか。



 ◆



「いっしゃいませー」


「うへぇなにこの店。甘い甘い。もう空気からして甘ったるいじゃん」


 アリスに連れてこられた店はいかにもという造りだった。無駄にふわふわキラキラして少し頭の悪い感じ。

 しかも何故か店内は現代風のファミレスに近いし。本来の世界観は中世ぐらいなのにね。原作プレイ時も思ったけど細々としたところの作り込みが甘いんだよ。


 そもそもなんで異世界にパフェがあるんだよ。おかしいだろ。

 まぁそんなこと嘆いたところで無意味だ。元々シナリオ含めご都合主義が蔓延っていたわけだし。


 まぁそれはさておき、僕を(無理矢理)連れてきたアリスはというと


「ふむ……噂には聞いていたけど中々の店ね」


 なんというか大変ご満悦のご様子だった。もうなんか色々と好きにすればいいと思う。


「こちらへどうぞっすー」


 女性店員ウェイトレスに案内されたのは二人がけの席だった。しかも対面。明らかにカップル仕様だし店内の席のほとんどがこれと同じだ。客層も同様だ。


「あまりキョロキョロしないの。みっともないわ」

「あ、はい」


 そんなこと言われましても。


「メニュー表です。どうぞっすー」

「ふむ。中々に迷うわね」


 店員に渡されたメニュー表を見るアリスの目は冒険者が高難易度の迷宮に挑む時ばりに真剣そのものだ。

 てかなにこれやば。メニュー表に書いてあるものがもはや呪文の域なんですけど。


 なんだよジャンボキャラメルバニラショコラチョコレートソースデラックスイチゴドラゴン風味パフェとか。もはや意味分からん。


 とにかく僕みたいなモブがこんな空間にいたら場違いすぎて塵と化すぞ。もう帰りたいんですけど。


「決めたわ。私はこれにするわ」

「あ、僕も同じので」


 時間にして五分。たっぷりと時間を使い決めたアリスは大変満足そうだ。

 僕は特に拘りはないのでアリスに便乗することにした。


 しかし彼女は何故か不満顔だ。なになんなの。


「いえ待ちなさい。二人とも同じものを頼むのは非効率だわ。せっかくだから貴方はこっちのを頼みなさい」

「あ、はい」


 言われるがままに頷いたが非効率ってなんだろうか。


「ご注文承りましたー」


 注文を受けた店員は何故か僕の耳元に近づいてきた。なんぞ?


「ごちそうさまっす~」


 そしてニマニマ顔でそんなことを囁かれた。

 その後店員はそのままニマニマとした笑みを顔に貼り付けて厨房へと去ってしまった。

 なんか変な勘違いをされている気がするんですけど。無駄に微笑ましいものを見ている感じ的な。


 ちょっ、違うから。そういうのじゃないから。まじでほんとのほんとに違うからっ!




◆◆◆


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