第11話 謎の美少女が現れると大抵厄介事が舞い込んでくる①


「今日も今日で絶好のサボり日和だなぁっと」


 迷宮からはや一週間。僕は再び学園の屋上でモラトリアムを謳歌していた。

 ここ数日は大変平和で極まりない。メインストーリーは筒がなく進み、僕がやることもあまりない。


 少し話は変わるが基本的に学園で僕の評判は概ね悪い。これは僕の学園生活における態度が原因だ。授業中はほとんど寝ているし実技の科目でも基本的にやる気をみせない。そのせいか成績はギリギリ進級出来る程度で地を這うが如し。


 まぁ当たり前といえば当たり前だがこれには海よりも深くソラよりも高い理由がある。

 僕の目的はあくまで主人公達の観測であり、卒業など二の次なのだ。むしろ本編が終わったら退学しようかなと思っているまである。


 そんなわけで落第にならないレベルを見分け、授業をサボり屋上でうたた寝をしているわけである。

 なんというかね、どの世界に行ってもサボった時間でする惰眠はこの上なく最高なのです。


 ガチャリ。


 しかしそんな至福の時間をぶち壊すようにドアの開く音が耳に叩きつけられた。


「うへぇまた来たのか……ってどなた様?」


 てっきりいつもの奴リッカ・ソレイユかと思えば、見覚えのない人影がそこにはあった。


「貴方は確か……モブ・モブリオン君、だったかしら」


 現れた少女は黒髪の美少女と言っても差し支えない存在だった。それもとびっきりの。

 腰まで真っ直ぐに伸びた黒髪に人形のように整えられた顔立ち。陶器のように滑らかな純白肌にスレンダーな体躯。そのどれもが彼女を美少女たらしめていた。


「え、まさかの名前を覚えられてた。もしかして僕って有名人?」

「悪い意味でね」


 そうですか悪い意味ですか。

 あれか原作には関係ないからと言って貴族をからかって遊んだのがいけなかったのだろうか。だってアイツら無駄に権力振りかざしててムカつくんですもの。僕は悪くねぇ。


「貴方はいつも気楽そうでいいわよね」


 そんな僕を見て彼女は何か思うところがあるのか、そう言って彼女は屋上を後にした。


 うーん、どこかで会ったことあるかな?


 どこかで見たようなそんな中途半端な感覚を覚えるがどうにも思い出せない。

 すぐに思い出せないということは原作ゲームにおける主要キャラではないとも言えた。


 そのはず……そのはずなのだが、どうにも僕は引っ掛かりを覚えた。何か重大な見落としがある?


 まさかなぁ。


 この時の僕は思いもしなかった。後にこの事があんなことに発展するとは。



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