第10話 原作ヒロインとのフラグは間に合ってるのでいりません


「よく分かった。もう出ていっていいぞおら」


 場所変わり、再びギルドマスター室。


 迷宮で事を済ました僕は報告に来ていた。ちなみに冒険者達もギルドに引き渡した。まじ律儀で偉いと思う。ご褒美に僕に好感度MAXな美少女をよこせ。


 あ、リッカとかクラリスみたいな原作ヒロインはいらないです。えぇ厄介事しか来ないので。


「ふぅーこれで一段落かな?」


 ギルドマスター室を出るといくぶんか肩が軽くなるのを感じた。


 まーあのクソゲーが元になった世界だ。これで終わりなんて都合の良いことなんてないだろうが、それは主人公君とかが解決してくれることだろう。


「ん?」


 なんかむこうの突き当たりに人影が見えたような? ていうか突き当りの端から金色のツインテールらしきものが飛び出ているくね?


 よし。見間違えだな。


 僕は何も見ていないので迅速に可及的速やかにこの場を離れて帰るとしよう。帰ったら三〇時間ぐらい惰眠を貪るんだ。


 早くお家に帰らなきゃっ!


「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!! え、ちょっホントに! だから止まりなさいよ!?」


 チッ、逃げ切れなかったか。


 そのまま聞かないフリをして逃げても良かったが変な噂をたてられても困る。大声過ぎて人が集まってきそうだし、ツンデレって現実にいると本当に厄介なんだな。


「……ナニカゴヨウデスカ?」


「だからなんでカタコトなのよ」


 そんなこと言われましても。


 何度も言うが僕はモブだ。モブが自らメインキャラ様達と関わろうなどと烏滸がましいことはしてはならない。カタコトはその決意表明みたいなものなのだ。


「そ、それでアンタを呼び止めたのは……」


「呼び止めたのは?」


 彼女は言葉に詰まったのか凍結フリーズした。そしてすぅーはぁーと数回繰り替えした後、勢い良く僕に指さした。


「れ、礼は言っておいてあげるわっ! アタシ一人でもどうにでもなったけど礼は言っておいてあげるわっ!!」


 わーおナイスツンデレ。あまりにも堂々たるツンデレ具合で言葉も出ない。流石僕の前世で祭り上げられて主教団体が出来ていただけはある。


「そ、それで本題なんだけどーー」


 彼女はコホンと気恥ずかしそうに咳払いをしてゆっくりと僕を見据えた。さっきからいちいち動作が可愛いなおい。


「ま、まぁその? 見たところソロみたいですし? アンタがどーーーーーーーしてもっていうならパーティーを組んであげてもいいわよ?」


「あ、結構でーす」


 シュタッと右手を上げて後ろへグルリ。僕はクールにこの場を後にするぜ。


 歩きながらチラッと後ろを一瞥。負けヒロインちゃんは心なしかプルプル震えているが、きっと僕みたいなモブとの会話が終わって嬉しいのだろう。きっと僕をパーティーに誘ったのも助けられた手前、仕方なく言ってくれた社交辞令なのだ。


 彼女は今回の件を清算チャラに出来るし、僕は原作ヒロインに関わらないで済む。まrさにウィンウィンの結末でーー


「なんでだーーーーーーーーー!!!!!」


「ちょっやめっ、服が千切れるでしょーがっ!」


 そう思ったのに何故かおもっくそ服を引っ張られた。ちょ、ほんとに千切れるからヤメレ。


「なんでよ!? このアタシが組んで上げるって言ってるんだから有無を言わずに頷きなさいよ!!」


「あ、いやなんか面倒臭そうですし」


 あ、やべ本音出た。


 まぁいいか。もうすでにメインヒロイン様という特級呪物並みの厄介事を抱えているのだ。これ以上増えたらたまったものではない。


「そ、そんな……ギルドでは引く手数多のこのアタシが……お、おぼえてなさいよーーーー!!!!!」


 クラリスは三下キャラばりの捨て台詞を吐いて走り去ってしまった。


 えっこれまさかフラグじゃないよね?


 彼女は大変大層な美貌を誇っており、これが原作終了後ならそれもやぶさかでもない。


 しかし、まだ原作は終了しておらず依然として世界は滅亡の危機にあるわけで。


 ま、大丈夫か。よくよく考えたら原作ヒロイン様とモブである僕との間にフラグなんか出来るわけないしな!


 ……大丈夫だよね?




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