第4話 モブも歩けばヒロインにあたる②


 前回のあらすじ! 

 なんとなく冒険者ギルドに顔を出したら美少女が荒くれ冒険者達に絡まれていた。流石に見て見ぬふりするのもあれと思い助けることに。しかしここで衝撃事実が判明した。彼女はなんと原作ゲームヒロインの一人だったのだ。


 いや、どういうことだってばよ……。


「ちょ、ちょっと!? なに固まってんのよ。何か言いなさいよ!」


 現在、僕の目の前では金髪ツインテの美少女が猫のように威嚇していた。

 しかし彼女には大変申し訳ないが僕は今それどころではない。


 えぇ、まじでー?


 一縷の望みをかけて少女を改めて観察するがどうにも見たことがある。会ったことなどないが、記憶にはしっかりと刻まれた容姿だ。ということはつまりーー


 はい現実逃避するのやめます。どこらかどうみてもヒロインの一人です。本当にありがとうございました。


 彼女は通称負けヒロインちゃん。原作ゲームでは主要人物でありヒロインの一人だった。

 ツンデレツインテール爆乳金髪かつ負けヒロインとオタクにウケる要素をこれでもないかと詰め込んだ超絶美少女キメラが彼女だ。


 主要人物に関わるのは不味い。

 に、逃げなきゃ。ともかく可及的速やかにこの場から逃げないとっ。


「ちょっとアンタっ!! ま、待ちなさいよ!!」


 チッ、糞がぁ。


「えっ!? なんで舌打ち!? なんで今舌打ちしたの!?」 


 そんなこと言われましても。切実に関わりたくないんですもの。口が裂けてもそんなこと口に出せないけど。


「と、とにかくまぁいいわ。いい? あんな奴らアタシ一人でもどうにか出来たんだからね! れ、礼は言わないわよ!!」


 彼女はフンッと鼻息を鳴らしズカズカと足音を立てて冒険者ギルドから去ってしまった。おぉナイスツンデレ。今のところツンしかないけど。


「ツンツンしてるけどあれでもいい子にゃ。ツンデレツンデレにゃ」

 

 ニャルメアは事態が終息したと見て再び僕に話しかけてきた。

 負けヒロインちゃん、お前この世界でもそんな評価だったのか。

 原作ゲームをプレイしている僕はもちろん彼女がそのような人物であることは把握している。


 クラリス・アルケイディア。


 ツンデレ金髪ツインテな上にお節介焼き。その上に爆乳だ。まぁ人気が出ないわけないよね。

 えぇ前世でも超人気でしたよ。負けヒロインであったことも相まってか、経済効果とか半端なかったもの。なんだったら御神体とか建てられていたもの。おかしいだろ。


「しかしあのモブが助け船を出すなんてにゃぁ。もしかしてホの字かにゃ? にゃ?」


 んなわけあるか。この色ボケ猫が。

 今回は反射的に助けたが、仮に彼女が先に原作ゲームヒロインだと分かっていても同じことをしただろう。

 この世界はゲームを元にしているようだが、現実だ。人々は自ら思考を行い判断し自由に世界を謳歌する。


 だから全てのことがゲーム通りに行くとは限らないのだ。例えばあのツンデレちゃんがあの荒くれ者達に乱暴されて闇落ちするなんてこともあり得るわけで。


 そうなったら本当に恐ろしい。現状、ほぼ原作通りに進んでいる世界がどうなるのか皆目検討もつかないのだ。そんなことを説明するわけにもいかないので、お茶を濁すことにした。


「……僕にも色々あるんだよ」

「ふ~ん。ま、そういうことにしておいてやるかにゃっ!」


 ニャルメアはまた他人事だと思いケラケラと笑った。

 

 しかしこれフラグじゃないよね?

 ただでさえメインヒロインのリッカでお腹一杯なのに、これ以上増えるとかほんと勘弁してほしいね。







 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る