第30話 さらば、雨之島よ
『皆様、当機はまもなく出発いたします。東京空港までの飛行時間は約一時間を予定しております』
音質の悪いマイクを通した機長の声が機内に響いた。
俺は窓際の座席に座って、外を覗いた。澄み切った秋空が目の前に広がり、滑走路が強い陽射しに照らされている。
一人の客室乗務員がアイルを進みながら飲み物や食べ物を売ろうとしている。
俺はコーラを一つ頼んで、じっくりと飲む。
しかし、母は何も頼まなかった。彼女は引っ越しの準備で疲れ果てたのか、目を閉じて眠っている。
少し間を置いて、飛行機が動き始めた。
俺は飲みかけたコーラをこぼさないようにしながら、次第に小さくなっていく雨之島を
学校や住宅街がまるで蟻のように見えた。
それに、俺と三那子が探索した密林が一望できるような大きさになった。
密林のような大きなものが蟻と同じくらい小さくなったなら、家より小さいものが見えるはずはない。それなのに、何かが俺の視線を引いた。
蟻よりも小さく、強いて言えば一粒のような大きさだった。
それでも、あの黄色のやつはずっと俺の脳裏に焼き付いている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます