第4話

スナックるぱんに着いた。

「わあ、平仮名だけどルパン!」

「何かあるのか?」

「あの太宰治達、無頼派がよく訪れていたバー、ルパンをお存じでない⁉」

「悪かったな。無知で。太宰治はさすがに知ってるぞ」

「知らなかったら、ぶん殴ってた」


 文学少年・瀬名治は素面のくせに、よく喋る。

 先生を独り占めにし、文学論を語っている。

 俺は話についていけず、黙々とポテトフライを食べていた。

「にゃあん」

 ニャンコ大先生が俺を慰めるように隣の席に座る。

「大先生は優しいな」

 大先生を撫でまくる。人馴れした可愛い三毛猫だ。

「にゃあん」

「猫いるんですね!」

「うん。ニャンコ大先生っていうんだよ」

「よろしく、ニャンコ大先生」

「にゃあ」

 瀬名が席を立ってニャンコ大先生を撫でに来た。

「にゃあ、にゃあ、ごろごろ」

 ニャンコ大先生が喉を鳴らしている。猫を馴らすのが上手いのか。

「さっき、瀬名と何話してたんですか?」

「無頼派の作家達についてかな」

「そのブライハっていうのは何か文学的な派閥のようなもんですか?」

「そうだね。太宰治を中心とした派閥で、無頼、つまりは反俗、反体制、今までの文学とは違うぞーっていうのを示そうした人達のことだよ」

「へえ、太宰以外には誰かいるんですか?」

「織田作之助、坂口安吾、檀一雄とかかな」

「すみません、あまり知らなくて……」

「ふん、その有名どころも知らないのか」

「有名どころなんですか?」

「まあ知らない人は知らないさ」

「文学部を選んでおきながら、知らないとは情けない」

「まあ文学部なんて、他のよりかはマシだし、本(ラノベ)読むの好きだから、選択しようなんて輩が多いのも事実だよ」

「それまんま俺ですわ、すみません」

「おい」

「ごめんって」

「今じゃ瀬名君みたいに純粋な文学少年は貴重さ」

「今の世の中がおかしいんですよ! 文学を軽視している!」

「ははは、熱いねえ」


 その日は瀬名が、ずっと文学論等を語っていた気がする。

 俺はそれに適当に相槌を打ったり、ニャンコ大先生を撫でたりして過ごしていた。


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