君は僕の記憶の中

 君に会えなくて寂しい。

 朝になると君は焼きたてのトーストと温かいコーヒーを淹れてくれたね。

 僕だって一人で朝食が作れるんだよ。

 コーヒーはぬるくて、トーストは焦げてたけど。

 ほらね、ちゃんと作れる。

 家の外は雨。

 雨垂れの音を聞きながら、こげこげのトーストをかじる。

 トーストはいつもに増して苦かった。

 外の空気が吸いたくて雨粒が伝う窓を開け放ってみる。

 外の冷たい湿った空気が雨粒と共に、ぶおっと吹き込んだ。

 雨に混じって涙が頬を伝う。

 ああ、君に会いたい。

 空が一緒に涙を流しているかのようだ。

 あ、思い出した。

 雨の日はいつも君は窓辺で雨ふりを眺めながらコーヒーを飲んでいたね。

 記憶の中はいつも君の匂いでいっぱいだ。

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