恋は雨上がりのひなたのように
六月になった。
風を切るように雨粒が学校の窓を打ち、校庭の土は泥の川のように流れ、学校の片隅に植えられている桜の枝葉は水の重みで垂れ下がっていた。
しかし、高校二年生の青年の恋心は濡れも湿りもしていたなかった。
青年はルンルン気分で音楽室に向かう。
音楽室では少女がゆったりとピアノを弾いていた。
ベートーヴェンの『悲愴』だった。
「ずーと雨。太陽の暖かさがこいしいわ。まさに悲愴的ね」
青年は濡れそぼった花のようにピアノを弾く彼女を見て、どうにかして元気づけたいと思った。
青年はピアノを回り込み、彼女の頬にキスをした。
彼女は頬を赤くして彼を見上げる。
「ほら、君の顔に太陽が昇った」
青年は花が咲くように彼女に微笑んだ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます