彼女がシャンプーの匂いを変えた

 昨日、彼女と別れた。

 別れ際、小さな駅のホームで僕らは最後のハグを交わした。

 ハグをした時、彼女の髪の匂いが香った。

 知らないシャンプーの匂いだった。

 彼女に知らない男がで出来たんだろうなということは簡単に推測できた。

 綺麗な花には虫が寄ってくる。

 香りを変えれば違う虫が寄ってくる。

 僕は彼女を胸に抱きながら、その事実を悟り、冬の訪れを知った生き物のように、心の中がすうと寒くなった。

 胸元で彼女の匂いが香る。

 その香りが僕をたまらなく寂しくさせた。

 彼女は僕の手を優しくほどくと、僕に背を向けて歩き出す。

 彼女の髪をそよ風が撫でる。

 風に揺れる花のように、彼女の髪はたおやかに流れ、清純な彼女の香りが僕の元まで届いた。

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