私の彼は本が好き

 彼は毎朝同じ喫茶店で本を読む。

 喫茶店のドアを開けると、いつもの席に彼はいた。

 イスをひいて彼と向き合って私は座る。

 彼はちらりと私のことを確認すると、本の世界にもどった。

 私はコーヒーを一杯注文する。

 コーヒーを飲みながら彼を眺める。

 きれいな人。

 コーヒーを片手にゆったりと本を読む彼から目が離せない。

 静かに本を読む彼と、向かいで息をつめて眺める私。

 会話はなかった。

「君、本に夢中になるのはいいけれど、本に夢中になり過ぎるのは良くないと思うよ。異性の女性の前では特にね」

 そう言って私は彼に背を向けて店を出た。

 ああ、悔しい。

 私は彼にとって本一冊にすら劣るどうでもいい存在なんだ。

 彼の1番になりたくて嫉妬する。

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