絵に描いたような朝食

「ごめん紗里さりちゃん、布団狭かったよね」

「そうね、初めてのことだったから、まさかあそこまでベッドが狭くなるとは思わなかったわ」

「怪我してない?」

「大丈夫よ」

「それなら良かったけど……」

「私の方こそごめんなさい。運ばせてしまって、ベッドを使ってしまって」

「それは私の方こそなんだけど……怪我無くて良かったよ」


 紗里が朝食の準備をしてくれているのを待ちながらの会話。落ちたと言う事実は変わらないが、理由はなんとでも言える。


 準備を手伝おうかと思ったが、もう殆ど準備も終わっているし、慣れないことをして迷惑はかけられないため、若菜わかなは大人しく座っている。


「紗里ちゃんって毎日朝ごはんはこんな感じなの?」


 パンがあればパン。ご飯があればご飯。とりあえずある物を食べる若菜にとって、こうしてテーブルに座り、一汁三菜揃った朝食なんて、ドラマの中でしか見たことがない。


「いつもはもっと簡単よ」

「そうなんだ――」

「たまには、こうして豪勢な朝食も良いと思ったのよ。だから気にせず食べて」


 ご飯、味噌汁、魚、卵焼きに和え物。絵に描いたような朝食だ。


「豪勢な朝食はこんなのしか思いつかなかったわ」

「うん、私もイメージはこれだ」


 ちなみに、洋食ならトーストにベーコンエッグ、レタスとトマト、そしてコーンスープである。


「あれ? 魚って昨日買ってた?」

「コンビニに買いに行ったわ。今のコンビニは良いわね、チンすればこうして美味しそうな鯖の味噌煮が買えるのだから」

「美味しそうだけど別に買わないやつだね。涼香りょうかは買ってたけど……」

「学校で食べてたの?」

「うん、チンしてた」

「えぇ……」


 不意に、自分の好きに正直な涼香を見習いたいと思う紗里であった。

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