休日の睡眠を邪魔する存在

 休日の朝っぱらからけたたましく鳴るアラームは、最早人を起こすものではなく、人の睡眠を邪魔する存在になっている。


 しかし自分でセットしたのだから文句は言えない。若菜わかなはとりあえずアラームを止め、布団の中でモゾモゾとうねっていた。


 間違いなく自分の家よりも良い寝具で寝ていたのだが、慣れたものではないため、変に身体が疲れてしまっている自覚がある。


 すぐ真横で紗里さりが眠っていることに、なんだか変な気持ちになりながら、その美しい寝顔をじっと観察してみる。


 同じベッドで眠っているのだから、さっきのアラームは紗里にも効いている。数秒観察していると、ゆっくりと紗里の瞼が開かれた。


「ん〜、おはよ、紗里ちゃん。…………へへっ」


 目を覚ました紗里が目を動かして若菜を捉える。すると若菜とは反対の方向へと転がった。寝起きだからゆっくりとした動きではなく、そこそこの勢いで転がっていた。


 そしてここはベッドの上、紗里の寝室のベッドは、片方を壁際に寄せていない。若菜も紗里も、下手すればベッドから落ちる可能性があったのだ。


 そんなベッドで反対方向へ転がってしまうと――。


「紗里ちゃん……⁉」


 寝ぼけた頭でも、その光景に思わず声を上げてしまった。


 鈍い音を立て、紗里は自らベッドから転げ落ちたのだ、それも無言で。


「えぇ……」


 その光景を完全に理解できたのは、無言で立ち上がった紗里が寝室を出て行ってからであった。

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