若菜と紗里 私のせい 8
正常な判断能力を失っている
一緒にお風呂に入るなど、
四方八方から緊張で雁字搦めになっている若菜の頭に氷嚢を置いて、紗里は右手と右足を同時に前に出しながらお風呂を洗いに行く。
シャワーを捻り、水を軽く被ってしまって我に返る。
本日二度目、眼鏡を外した紗里が手で顔を覆う。
今回のミスはさっきまでとは違う意味でマズいものだった。紗里は自分の肩に手を乗せる。
――今までひた隠しにしてきた自分の体のこと。
この傷は、家族しか知らない。他人に見せたことが無いものだ。
今からでも、やっぱり一人ずつ入ろうと言えば見せずに済むのだが、だけど、いつか若菜にだけは話したいと思っていた。
ここで見せなければ、いつまでも勇気を出せずに隠したままだ。
(でも――若菜に気味悪がられたら……)
なにも言わなくても、若菜が引きつった笑みを浮かべる光景を想像してしまう。
慌てて帰る準備をして、それっきり若菜と連絡はつかなくなる。
(若菜はそんな子じゃないって解っているのに)
嫌な想像だけは鮮明にできてしまう。
紗里は頭を振って、嫌な想像を頭から追い出そうとする。こういう時は楽しいことを考えるに限る。
(若菜なら……笑って受け入れてくれるわよね)
紗里が共に時間を過ごしてきた若菜なら、紗里の心配なんて関係無いと、笑って受け入れてくれるはずだ。
そうやって自分中心で物事を考えてしまった。若菜と一番共に時間を過ごしたのは自分だと。自分が一番若菜のことを知っていると。そんな訳無いのに。
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