涼香の誕生日会にて 21

「一位の服飾部には豪華賞品があるのよね?」


 とりあえず着替えた涼香りょうかが、司会進行を代わった紗里さりに聞く。


「確かに、そう書かれているんだけれど……分からないわ」


 若菜わかなから貰った進行表に、豪華賞品あり、の文字があるが、肝心の豪華賞品がなんなのかは分からない。


「若菜?」


 元々司会進行をやっていた若菜なら分かるのではないかと、紗里が聞くが、黙って目を逸らされてしまった。


「若菜?」


 もう一度。


「もしかして」

「…………後日」

「その場のノリでやったのね」


 困った子ね、と言いたげに息を吐く。


「ごめんなさいね、夏休み明けに渡せるように用意するわ」


 恐らく、参加者は豪華賞品というものが、その場のノリで書かれていることを知っていたのだろう。


 それでも、書かれているのであれば、招待された側として自分が用意しようと紗里は決めた。


 まさか本当に用意してくれるつもりだとは思わず、服飾部も驚いた顔をして紗里に確認を取っていた。


 その隣で――。


「豪華賞品は涼音のほっぺたを触るというのはどうしら? かなり豪華よ」

「あたしを売らないでください……」

「冗談よ」


 置いてけぼりにされていた涼香と涼音はじゃれ合っていた――というか、いつも通り、涼香が涼音に絡んでいた。

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