水原家にて 30

「もしかして――」


 なにか思いついた涼香りょうか


 再び二階へ上がると、手前の部屋に入る。


「どうしたんですか?」


 後を追ってきた涼音すずねも部屋に入る。


 塵一つない殺風景な部屋、そこにあるダンボールを涼香は開く。


「やっぱりそうね」

「なんですかこれ……水?」

「防災備蓄ね」


 ダンボールに入っていたのは、五年保存できる水やアルファ化米、野菜スープや乾パンなどだった。


「これ全部ですか?」


 部屋にダンボールは七箱、その全てが備蓄なのだろうか。


「六箱はそうね。多分、涼音の家にも六箱防災備蓄があるはずよ」

「そうなんですか……⁉」

「そして、今回の掃除はこれね。あと半年で賞味期限が切れる物の入れ替えよ」


 ダンボール一箱に、食料とその他災害時必要になる物が入っている。今回はその点検をしろということだろう。


「あれ、でも六箱は分かるんですよ。あたしらの分を考えたらそうなんで。でも後一箱はなんなんですかね?」

「それはお楽しみよ」


 それっぽいことを言って、冷房を起動させた涼香が箱を一つ下ろす。

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