水原家にて 29

「綺麗ですね」


 涼香りょうかの後に続いた涼音すずねは、部屋の中を見て呟く。


 部屋の広さは涼香の部屋と同じ形で六畳、窓は遮光カーテンを閉められており、定期的に清掃でもしているのだろう、床には塵一つ無い。


 部屋の隅にはダンボールが積まれており、例えるなら引越ししたての部屋のようだった。


「部屋間違えましたかね?」

「もう一つの部屋も見てみましょうか」


 涼香も、この部屋は違うのではないかと考える。一度奥の部屋を見て、その部屋が汚れていればそこを掃除しようと涼音に提案する。


 部屋を出た二人は、奥の部屋へ向かう。


「……綺麗ですね」

「おかしいわね」


 その部屋もいつの間にか掃除されていた。


 とりあえず涼しいリビングへ戻ってきた二人は考え込む。


「おかしいわね……」

「掃除されてましたもんね」


 腕を組み、考え込む二人。あの二部屋を除いて、掃除されていない場所といえば地下室なのだが、二人は地下室は立ち入らないようにしているため違うだろう。


 そのため、お小遣いが隠されているのは、あの二部屋しかありえない。


「いつの間にか掃除されているということは、お母さんがなにかを隠したと考えられるけど――」

「いつもとパターン違いますよねえ」


 二人はまた考え込む。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る