水原家にて 28
「さて、どこにあるのかしら」
「分かってますけどもしかしてがありますもんね」
二人共知っているが、リビングにお小遣いは無いのだ。
これはただのお小遣い探しでは無い。涼香の母がただでお小遣いを渡すはずがなく、隠されている場所は、掃除が必要な場所なのだ。
掃除をすれば、そこにお小遣いがあったり無かったり。
「散らかってる場所は――」
「二階ね」
「……ですよね」
二階には、涼香の部屋の他に二部屋ある。そのどちらかの部屋にお小遣いがあるらしい。
散らかっているといっても、ごみ屋敷という訳ではなく、足の踏み場があるしエアコンも動く。
「どっち攻めます?」
お小遣いは一か所に隠されている。一発で見つけられたら、次はもう一つの部屋にお小遣いが隠されはず。しかし、隠されていない方から掃除をしてしまうと、二部屋綺麗になってしまい、ボーナスチャンスが一回減ってしまうのだ。
また汚れるまで待てばいいのだが、そんなにすぐ汚くなることは無い。
「そうねえ……」
涼香はしっかりと溜めて答える。
「ジャンケンをしましょう!」
「えぇ……」
溜めた末の答えがこれだ。
二人は二階に上がり、部屋の前へ立つ。階段を上がり、折り返すと廊下がある。手前に涼香の部屋、その隣に一部屋、そして廊下の突き当りに一部屋ある。
「私が勝てば手前、涼音が勝てば奥よ」
「分かりました」
「「最初は――」」
「パー! 私の勝ちね!」
「えぇ……」
早速手前の部屋に入って行く涼香であった。
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