夏休みにて 33

「盆休みは帰省するのかしら?」

「します」

「どうしてよ!」

「えぇ……」


 夏休みのこと。突然そんなことを聞いてきた涼香りょうかに答えた涼音すずね


「私も行くわ!」

「それは無理ですね」


 涼香がこんなことを言うのは今に始まったことではない。大方暇潰しでそう言っているのだろう。


「飽きたわ」

「早いですね」


 ボフっとソファに沈み込む涼香。涼音はそんな涼香の肩を蹴る。


「帰ると言っても、日帰りですけどね」

「私も日帰りだと思うわ」


 盆休みはそれぞれ親の実家、つまり涼香と涼音の祖父母の家へ帰ることになっている。帰るといっても帰る場所は田舎ではないし、車で一時間もかからない場所だ。


「帰りたくなーい」

「そういうこと言わないの」


 祖父母との仲は良好だ。それでも、毎年この時期にある強制イベントに辟易していたりもする。


 それになにより、暇なのだ。


 今こうして、暇だ暇だと言っているが、二人でいる時点で、割と暇などどうでもよかったりする。


 しかし、二人でいられない暇な時間程、苦痛なことはない。


「本を貸してあげましょうか?」

「……図鑑以外でお願いしますね」


 涼香のことだから、当然のように図鑑を渡してくるはずだ。


「図書館へ行きましょう!」

「暑いから却下」


 頬を膨らませる涼香であった。

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