夏休みにて 32

 夏休みのこと。


涼音すずねー、暇よー」


 宿題も終わってやることの無い涼香りょうかは、カーペットの上でゴロゴロ転がっていた。


「あたしも暇ですー」


 その様子をソファに座りながら見ている涼音。


 二人とも暇なのだが、なにもやる気が起きない。そして待っているだけで、なにか面白いことがやって来る訳でもない。


 行動しなくては、なにも起きないのだ。


「服、欲しいわね」

「別にいらないです」

「涼音は可愛いからなんでも似合うわよ」

「別にいらないです」

「お金が欲しいわね」

「別にいらないです」

「アルバイト、しようかしら」

「絶対ダメです」

「意地悪ね」


 なにを言ってもダメな涼音に、涼香は頬を膨らませる。


 そして、暇だと言うのなら少しは考えてくれてもいいではないの、という目を向ける。


「本でも読んでてくださいよ」

「涼音が一人になってしまうわ」

「風呂掃除」

「後でいいではないの」

「洗濯物」

「干しているわね」

「勉強」

「嫌よ!」

「なんなんですか」

「私よ!」

「あーもう‼ あたしが風呂洗ってきますー!」


 やることを見つけてしまったからには、やらない訳にはいかない。少しでも暇を潰すことができるのならやるべきだと判断した。


「涼音ー! 置いてかないでー!」


 早足で風呂を洗いに行く涼音に向かって手を伸ばす涼香であった。

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