夏休みにて 34

 夏休みのこと。


「こんな物を見つけたわ」


 涼香りょうかは白いプラスチック製の球を持っていた。


「なんですか……ピンポン球?」

「ピンポーン」

「うわぁ涼しい。で、なんでそんな物が?」


 水原みずはら家には卓球関係の物は無いはずだ。それなのにピンポン球を見つけたのだ。


「分からないわ」

「えぇ……」


 爆発物かもしないのに、よく出処不明の物を持ってきたものだ。


「お父さんが関係している――という訳ではなさそうなのよ」

「どうでしょう。昔、普通の水風船だと思っておもいっきり投げたら爆発しましたよ」


 爆発といっても、水風船が割れた瞬間に弾ける水の勢いが物凄かったぐらいだが。


 もしかするとそのピンポン球も、衝撃を与えると爆発したように割れるかもしれない。そしてそんな危険物(疑)を、涼香が持っているということが非常にまずい。


「先輩、貸してください」

「嫌よ」

「はあ?」

「返してくれないではないの‼」

「当たり前じゃないですか」


 それは当然だ。危険物と危険人物は離さなければならない。


「いいではないの」

「ダメです。早く!」


 涼香に詰め寄って、その手からピンポン球を奪おうとする。


 そうすれば、当然涼香は奪われまいと抵抗する。そして抵抗すれば、涼香はピンポン球を落としてしまう、こんな一足す一は二並みの簡単にできる予測なのだったが――。


「あら」

「あ……」


 涼香の手から零れ落ちたピンポン球は床へ一直線。涼香も涼音すずねも、手を出して受け止めることするできなかった。


 カツンっと音を立てたピンポン球は爆発――しなかった。ただのピンポン球のようだ。


 カラカラと床を転がるピンポン球を見ていた二人、ただのピンポン球ならやることは一つ。


「卓球するわよ!」

「はい!」

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