清水家にて 3

「……これをこうすれば、リアルタイムで映せます」


 眼に涙を溜めながら、めいながカメラの説明をする。


 このカメラは、涼香りょうかの誕生日当日、各教室に設置して使うものだ。


 菜々美ななみの案は単純、各々の教室をリアルタイム映像で共有するということだ。こうすることにより、一か所に集まらなくても参加できる。


「わあ、凄いですね。あ、そうだ。もしかして今もこの部屋をカメラで撮っているなんてことは――」

「無いよ! さすがに家ではしないよ‼」

「えへへ、ですよね」

「ここね、使えそう?」

「うん! 大丈夫だよ!」


 三人の会話に参加できない涼音すずね若菜わかなはどうしたものかと顔を見合わせる。


 すると、置いてけぼりの二人に気づいた菜々美が口を開く。


「このカメラで、各教室を繋げるの。そうすれば、一か所に集まらなくても大丈夫になるはずよ。細かいことは後で教えるわ。使い方はここねも憶えてくれたみたいだし」


 随分と早口で菜々美は話す。涼音と若菜を置いてけぼりにしていたのも、もしかすると早く帰りたいからではないのか、涼音と若菜はそう考えた。そうなのであれば、質問は後に回そう。


「なるほど、分かった」

「もし分からないことがあれば、その都度聞きますね」


 これ以上なにも言うまいと口を閉じる。それを見た菜々美は頷く。そして、めいなの方へ目を戻す。


「終わり次第返しに来ます」

「じゃあ、わたし達予定があるので」

「え⁉ もう少しゆっくりしていけばいいのに」


 急なことにめいなは驚くが、元々菜々美達は家にお邪魔する気は無かったのだ。


「“元”盗撮犯の家に長居なんてできる訳ないですよね?」


 満面の笑みで答えるここねであった。

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