水原家にて 25

 ――一方その頃。


「さて、一つ聞きたいことがあるんだけど」

「どうしたの急に?」


 これから勉強を始めるという直前、涼香りょうかの母が勉強道具を出した涼香に言う。


「進路のことよ」


 その言葉を聞いて、涼香はみゅっとした顔になる。


 目指す大学はあるのだが、その場所は涼香が決めた場所ではないのだ。これに関しては涼香の意思云々より、客観的に見て、どの進路が最善かという母に言われたものだ。


「あなた、言っていたわよね? 進路は自分で決めると」

「それは……」

「まさか考えていないの? それとも見つけられない? 大人しくお母さんの言う通りにすれば楽だと思うわよ、ああそれと涼音すずねちゃんもそこがいいと言っていたわね」

「涼音は関係無いでしょ!」

「関係あるわよ。ねえ涼香、私が進路の話をしていなければ、あなたはいつまでも動かなかったわよね?」

「当然よ!」

「どうしてそこで自信満々に答えられるのかしら……」


 最悪、見つけられなかったとしても、母の言う大学に入れる学力は身につけることができるのだ。


 だがしかし――それは涼香の甘えだろう。


「あなたが進路を決めなければ、勉強は無しにしようと思うのよ」

「なんですって⁉」

「だって、目的も無く勉強したところで無意味でしょう? それに、あなたは勉強をしたくないみたいだし」


 母から鋭い視線を受けた涼香は目を逸らすのだった。

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