車の中にて 10

 それから車で走ると、やがてとある住宅街にやって来た。涼音すずねはここ付近には来たことが無い。


「デッカい家ばっかですね」


 涼音や涼香りょうかの家は防爆仕様だが、特に大きい訳でもない。駐車場も無いし、見た目も洋風の明るい色ではなく、汚れでくすんだ白い壁だったりする。


 そのため、このような大きくて綺麗な家を見ると少し圧倒されてしまう。


「頑丈そうだね」


 若菜わかなの家は築年数が経っており、家の前を大型トラックが走ると僅かな揺れてしまうといった具合だ。


 そのため、このような築年数が浅く、頑丈そうな家を見ると、羨ましくなってくる。


「涼音ちゃんって断熱材入ってる?」

「防爆仕様の時に断熱材も入れたらしいです」

「防爆……? 菜々美ななみのせい?」

「いえ、先輩のお父さんのせいですね」

「えぇ……」


 ちなみに水原みずはら家では、涼香の父の部屋は地下の頑丈な鉄扉の向こう側にあるらしい。


「私ん家は防爆仕様にするの大変だったわよ」

「わたし達が将来住む家も防爆仕様じゃないとねえ」

「ちょっ――ここね⁉」

「防爆仕様なら、先輩のお父さんに任せればいいと思いますよ」

「涼音ちゃん、また今度そのお話詳しく教えてね」

「了解です」


(今の世の中って、防爆仕様の家が当たり前なの?)


 三人の防爆仕様の話を聞きながら、今度紗里さりに聞いてみようと決意する若菜であった。

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