夏休み編 8月

夏休みのお出かけ編 2

屋内型複合レジャー施設にて 20

 二巡目、涼香りょうかの番がやってきた。


 次はなにを見てくれるのか、あやゆずは身構える。


 そしてその隣のレーンでは、次はどうやって夏美の目を逸らそうかを考える。


 今回も涼音すずねを見ているし、明里あかりにもアドバイスするから大丈夫だろうが、念の為だ。


「ボールは重いんで、無理して投げようとしなくても案外大丈夫なんです。置いて押してあげるような感じでやってみてください」


「わかったー。見ててね」


 ほんとに分かってんのか? と明里を見ると、明里も彩に気づいて、手を振ってくる。


 説明中、視界に涼香が入らないよう、明里も調整してくれているし、今回は大丈夫だろうか。


 涼音は夏美に言われたように、脱力して投げているらしく、スペアまでとはいかずもそこそこ倒していた。


「わー、やったよ夏美ちゃんに彩ちゃん! 三つ倒れたよ」

「……平和」


 三ピンでも、ガターに比べれば大きな進歩だ。


 隣のレーンでは、若菜と柚が凄まじい速度で動いていたが、見ないようにする。


 とりあえず、明里の二投目が始まるまで、夏美の視線を右――涼香達のいるレーンに向かないようにする。


「夏美」

「なんですか?」


 呼んだはいいが、なにを話せばいいのか分からない。


 ちらりと夏美越しに隣を見ると、恐らく涼香の二投目始まるところだ。


 ボールがレーンに激突する音が聞こえたが問題ない。


「いや……別に……」


 もう大丈夫なのだが、呼ぶだけ呼んだというのもアレだ。彩は頑張って言葉を絞り出す。


「楽しい……?」

「はい!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る