屋内型複合レジャー施設にて 21
二巡目の
自分達の仕事は、涼香による被害を出さないこと。
「次はどう来ると思う?」
柚の疑問に、次はどう来るのかが、大体分かる若菜が答える。
「真上に投げる」
「えぇ……」
さっきは指が滑って後ろに投げる。そして次は、指が離れるのが遅くなり、真上にボールを打ち上げる。
そんなこと起こるのか? と言いたいが、涼香なら起こることだ。明日の涼香は筋肉痛に苦しむことなるだろう。
「……リバウンドなら任せて」
汗を滲ませた若菜が静かに言う。
ウェイトボールでも、ボウリングのボール程重たいものを使ったことが無いし、ボウリングのボールみたいに硬くてツルツルな物は尚更、失敗してしまうと若菜自身が怪我をしてしまう。
「駄目よ若菜。それは危ないから、私に任せて」
二人の会話を聞いていた
「でも――」
若菜が食い下がろうとするが、それを手を制して紗里が言う。
「もう時間は無いわ、二人は涼香ちゃんを守ってあげて」
涼香がボールを構えている。もう間もなく投げるはずだ。
「分かった、紗里ちゃんも気をつけてね」
「心配してくれるのね、ありがとう」
そして涼香の一投目、助走をつけてボールを投げる――が、若菜の予想通り、ボールは素直に涼香の指から離れず、そのまま上に向かってしまう。
「あら」
これには涼香も失敗したという自覚があったのだが、そのボールがどこへ行ったかは分からないらしい。宙を舞ったボールがその場に落下を始める。このままでは涼香に当たって怪我をしてしまう。
それを防ぐため、まず動いたのは紗里だった。
この中の、誰よりも早い反応速度で床を蹴って涼香へ肉薄。宙を舞うボールに向かって右手を振り抜き、凄まじい回転をかけて弾き飛ばす。
弾き飛ばされたボールは、先程の紗里の投球のようピン直前で着地、そして弾き飛ばす。
その間、紗里が失敗することは無いのだが、念の為、ボールが落ちてきても当たらないよう、若菜と柚は涼香の立ち位置をずらしていた。
そしてすぐさま席へ戻る、紗里も涼香のすぐ隣に着地と同時に席へ戻る。
「……ストライクを取ってしまったわね」
この一連の流れ、恐らく涼香は気づいていないらしく、またなにか不思議な力を使ってしまったのだろうかと首を捻る。
「おー、ナイスー」
若菜達は、何事を無かったかのように手を叩くのだった。
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