屋内型複合レジャー施設にて 16

 投球の順番は、当然最初に涼香りょうかだ。


明里あかり

「はあい」


 ということならと、あやたちのレーンは明里から始まる。


「あたしからですね」


 その隣は涼音すずねから始まる。


 涼香が投げるか投げないかのタイミングで、彩はさりげなく涼音の方を向く。


 それに吊られた夏美なつみ、ボールを持っている涼音に手を振る。


檜山ひやまさーん! 頑張ってー!」


 当然涼香達以外にも客はいるため、これぐらい声を出さないと聞こえない。


 涼音はいつもならしないが、軽く手を上げて返事をする。


 これでよし。


 ちらりと、涼香のいるレーンを見る。ボールを持つ涼香の後ろには、腰を落とした若菜わかなゆずがいた。


 疲れるだろうなあ、なんて思いながら、涼音は早速ボールを投げる。


 コロコロと、なんとも言えない速さで転がったボールは、最初は真っ直ぐに見えたのだが、段々横に逸れてしまいピンを四つ倒すのみ 。


「いーじゃん涼音ちゃーん!」


 後ろから凜空りくの声と、真奈まなの憎しみの籠った視線を受けながらボールを取りに戻る。


「檜山さん! 脱力だよ!」

「脱力?」


 まさかのアドバイス。涼音はこれ幸いにと夏美に聞き返す。


「うん! なんかいい感じに力を抜くんだよ!」

「なるほど……? じゃあ次はそうして投げてみる」


 二球目は夏美の言葉通り、力を抜いて投げてみる。レーンに乗ったボールは、滑るように真っ直ぐ転がり、そのまま、残ったピンを二本ほど倒した。


「おおー、なんかいい感じ」

「いーじゃん涼音ちゃーん!」


 さっきと同じ凜空のリアクションと真奈の視線を受けた涼音の一投目が終了した。


 その隣では――。


「やっぱり難しいねー」

「全部ガターじゃん」

「あっ、すみません、見ていなくて」


 全てガターに終わった明里と、少し微笑みながら言う彩。


 夏美は涼音を見ていて、どんな感じだったのか見ていなかった。


「大丈夫だよ、夏美ちゃんは涼音ちゃん見ていても。あっ、でも次はアドバイス欲しいなー」

「はい!」

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