屋内型複合レジャー施設にて 14

 ――一方その頃。


「よいしょっと……。で、作戦はどーすん?」


 一番軽いボールを両手で持ってきた凜空りく涼音すずねに尋ねた。


 作戦というのは、夏美なつみに本当の涼香りょうか(笑)を見せないようにする作戦だ。


「先輩の番になったら、こっちに注目させる感じですね」


 美人でクールな先輩というイメージを損なわせないための作戦、要は涼香のドジを見せなければいいのだ。そのための布陣。


「おけおけ、あたしに任せんしゃい」


 汚いウインクをしてくる凜空。さりげなく避けると、背後から舌打ちが聞こえた。


 驚いた涼音が後ろを向くと、そこにはいつの間にか背後に回り込んでいた真奈まながいた。


「せっかくの凜空のウインクを避けるなんて最低、許さない許さない許さない許さない許さない」

「いや……でもあたしが避けたからウインク受けれたんですよね……?」

「………………………………」


 涼音がいなければ、凜空はウインクを飛ばしていないし、涼音が避けなければ、そのウインクへ当たりに行けなかった。


「あーんもう、また止まってる」


 真奈の目の前で手を振る凛空であった。

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