屋内型複合レジャー施設にて 13

 ボウリング場へ上がり、靴を履き替えた一行はボールを選んでそれぞれのレーンに着く。


「優勝者には私が取ったお菓子を進呈するわ!」


 そこで涼香りょうかから放たれた言葉に、なんとなく場の雰囲気が盛り上がる。


「ふふっ、それは楽しみね」


 紗里さりは十三ポンドのボールを弄びながら笑っていた。


「紗里ちゃん絶対勝つじゃん……」


 紗里はアンダーリムの眼鏡をかけた、全体的に線の細い、お淑やかな美人に見えるが、見た目に騙されていけない。


 高校時代、ずっと図書委員に所属していたのだが、運動部からの勧誘は後を絶たない程運動ができる。若菜が試しにバスケットボールを渡した時、紗里はコートの端からゴールを決めたこともある。ただ運動ができるの範囲には収まらなかったのだ。


 そんな紗里の運動能力を知っているのは、運動部の若菜わかなゆず、後は運動部ではないが涼香と涼音すずねだ。


宮木みやぎ先輩がガチでボウリングしたらどうなるの?」

「多分、上投げでストライク取れる」

「やっぱり……」


 若菜と柚が諦めかけていた時――。


「甘いわね、二人とも‼」


 涼香が言った。


「これはボウリングよ。上投げなんてしたら設備が壊れてしまうわ。委員長はそういうことはしないわよ」


 涼香の言うことは最もだ。紗里がボールを上投げできても、それをしてしまうと床などに穴をあけてしまうかもしれない。


 勝利するためとはいえ、紗里がそんなことをするはずがない。


「いくら委員長でも、普通に投げると真っ直ぐ行くとは限らないのよ‼」

「「おお…………」」


 いつもの涼香ならこんな知性溢れることは言わないはず。若菜と柚は言葉を失うのだった。

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