屋内型複合レジャー施設にて 11

 ボウリング場は違うフロアにあるため、五人は早速移動を始める。


「で、何人来てんの?」


 先頭を歩くゆずあやが聞く。


「ウチ入れて六人」


 ということは合計で十人になる。


 夏美なつみはなにもできないとしても九人、そして柚の言う助っ人が入れば十分すぎる。なんなら、その助っ人だけでも大丈夫かもしれない。


「全く、あなた達も遊びに来ているのなら言いなさいよ」


 遊びに来たというか、涼香りょうかから護るために派遣されてきたのだが、涼香は当然それを知らない。


「サプラーイズ」


 だが、こうしてやって来てくれるぐらいだ。嫌々来ている者などおらず、ただ涼香と遊びたいという気持ちも強い。


「三年生が結構来てるんですね」


 少し緊張しているらしく、さっきから夏美は彩の近くを離れない。


「帰る?」

「帰りません!」

「あっそ」


 そんなこんなで、五人がボウリング場のフロアへやって来た。


「おーまたせー!」


 柚が大きく手を振ると、待っていてくれた五人も手を振り返してくれた。


「あらあら、明里あかり真奈まな凜空りく若菜わかな、それに委員長ではないの⁉」


 四人は同級生なのだが、委員長だけは一つ上、今は大学生だ。


「久しぶり」


 手を振ってくれる委員長――宮木紗里みやぎさりに手を振り返す涼香と涼音。


 柚が振り向き、サムズアップ。


 彩は、うざいな……、と思いながら涼音に聞く。


「あれって元図書委員長だよな?」

「知ってるんですか?」

「まあ有名っちゃ有名。国公立行ける学力あるのに、めっちゃランク下の大学行った人だし」


 紗里の通っている大学は、若菜の志望校でもあり、涼香が行くべき大学でもある。


 もし、紗里が国公立に通っていたのなら、今頃涼香は家から一歩も出ずに朝から晩まで勉強する羽目になっていただろう。


「なるほど。委員長は唯一、先輩の本性を知っている先輩ですよ。物理的な被害対策で一番の適任です」

「マジか、物理的に……」


 涼香による物理的被害対策に一番適任という言葉に、恐ろしいものを見たような表情を浮かべる彩である。


「二人とも行くよー」


 若菜の声が聞こえた。


 二人がそんな会話をしている最中にレーンを借りることができたらしい。


 聞くと、十人で三レーン使うらしい。


 壁際の三レーンで、涼香は一番端、真ん中よりのレーンだ。


 当然、涼香のレーンに紗里と若菜と柚の四人がつく。


 これで物理的な被害は起こらないも当然。


 そして涼音は、涼香と真逆の、壁側のレーンだ。


「まあ妥当ですね」

「えっと私は……」


 夏美が自分のレーンを確認する。夏美は、涼香と涼音に挟まれた真ん中のレーン。メンバーは当然彩がおり、あと一人は能代のしろ明里だ。


「初めましてだね夏美ちゃん、よろしく~」


 明里はのほほんとした糸目の少女だ。その目から、なにか裏がありそうだとよくいじられているが、裏なんて無く、急に開眼して、場の雰囲気を変えることも無い。


 同級生や涼音は知っているが、今日初めて会った夏美は少し彩の後ろに隠れながら会釈する。


「大丈夫、こいついいやつだから」

「彩ちゃんにそう言われると嬉しいなあ」


 そう言って彩に笑いかける明里である。

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