檜山家にて 6

 夏休みのこと。


 リビングで寝転がる涼香りょうか


「夏休み。そうねえ……夏休みねえ」


 毎度のことながら、訳の分からないことを言っている。


「どうしたんですか」


 涼音すずねは一応反応をする。涼音だって暇なのだ。


「いえ、違うのよ。違うの、ええ」

「そうですか」


 暇なのだが、涼香に付き合うのが面倒になったため、適当に返した。


「………………………………」

「…………………………………………」

「どうしてなにも言ってくれないのよ!」

「なんなんですか?」

「反抗期⁉」

「なんでもかんでもそれで解決しようとしないでください」

「いいではないの」

「よくないです」


 涼香は頬を膨らませるが、涼音は顔をそむける。


「いいではないのいいではないの! 暇なのよ」

「ねえ先輩、時間を早く進める方法って知ってますか?」


 これは水族館へ行く前日、涼香が言ったことだ。


 だから涼音の質問に答える涼香の答えは、以前言ったものと同じになるはずだ。


 ちなみに涼音は、楽しいことをする、と答えようとした。


「楽しいことをするのよ!」

「えぇ……」


 まさか答えが変わっているとは。


「さあ、楽しいことをしましょう‼」

「ああもう! くっつかないでくださいぃ‼」


 今日はぐっすりと眠れそうだ。

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