涼音の部屋にて 20

「先輩、風呂入りますよ」


 夏休みの夜のこと。


 着替えを持った涼音すずねが、伸びいている涼香りょうかを軽く蹴る。


 脇腹ではなく太ももを蹴る。涼音の優しさだった。


「……もうそんな時間なのね」

「えっ、寝てたんですか?」


 さっきからの静かだと思っていたが、まさか眠っていたとは。


 ふわぁ、と欠伸をした涼香は目を閉じて頭を振る。


「どうしたんですか?」

「変な夢を見たのよ」


 顔をみゅっとさせた涼香の答えに、涼音は興味深そうに聞く。


「へえどんな?」

「それが……覚えていないのよ……」

「なんだ。早く風呂入りましょう」

「もう少し興味を持ってくれてもいいではないの」

「え、だって覚えていないんですよね?」


 じゃあどうでもいいです、と言って、涼音はお風呂へ向かう。


 まったく困ったものだと、肩をすくめた涼香は、箪笥から自分の着替えを取り出し、お風呂へ向かうのだった。

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