檜山家にて 4

「暇ね――ぅえ⁉」


 ある日のこと。床に転がる涼香りょうかのお腹を踏んだ涼音すずね


 暇なのは分かるが邪魔だった。


 軽く踏んだだけなのだが、脇腹が苦手な涼香にとって、そのダメージはかなりのものだった。


「邪魔ですねえ」

「だからって……踏む必要は無いではないの……」


 身体を震えさせながら起き上がる涼香。


「だって暇ですもん」


 そう言われ、恐ろしいものを見たような表情をする涼香。


 そんな涼香に、手をワキワキさせた涼音が迫る。まるで変質者のようだった。


「私の反応で遊ぶのはやめなさい」


 そんな涼音の手を払い除ける涼香。しかし、この程度で止める涼音では無い。


 そのまま後ずさりする涼香を壁際まで追い詰める。壁にぺったりの涼香と目線を合わせて微笑む。


「可愛いわ――ねぇ⁉」


 脇腹を軽く突っつく。


 身を捩った涼香は追加攻撃に備えるため、釣り上げられた魚のようにピチピチと跳ねる。


 あまりの激しさに若干引いた涼音であったが、このまま引くという選択肢は無い。どうにかして脇腹を触ってやろうかと、狙いを定めるのだった。

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