涼音の部屋にて 18
「作ってきたわよ!」
バンッ、とドアを開けて入ってきた
微かに香る甘い匂いが、疲れ切っている涼音になにがあったのかを思い出させる。
「……生きてますか?」
「ええ、生きているわ。はいこれ、クッキーよ」
「わーい」
「食べさせてあげましょうか?」
涼香の声を聞かず、涼音は涼香の手からクッキーの入った袋をひったくる。
疲れているとは思えない程の速さだ。
身体を起こして、早速クッキーを食べる。
しっかり焼きすぎ感もあるが、甘くて美味しい。疲れが吹っ飛ぶ。
「復ッ活ッ、
「美味しいです」
「愛情を入れたわ!」
「知ってますよ」
続けて三枚ほどクッキーを食べると、身体をその場で伸ばす。さっきまでの疲れが嘘のように無くなっていた。
「あー、三日間無駄にした気分」
「いつもと変わらないではないの?」
涼音がそう言うが、基本的に予定は無いのだ。三日間ベッドに篭っていても、大して変わらない。
「違うんですよねぇ、自分の意思で篭もるのと動けなくて篭るのは」
涼音が言うにはどうにも違うらしい。
そういうものかと、適当に納得した涼香。
元気になった涼音は、涼香の手を持ち上げ、指先を観察している。
「少しだけ火傷したわ」
「だと思いましたよ。まあ、軽い火傷でしょうし大丈夫ですね。台所は壊してませんか?」
「壊すわけ無いでしょう」
「一人なのにやらかさなかったんですか⁉」
驚いた涼音は、涼香をペタペタ触る。
「なにをするのよ」
「本物だ……。なんか服湿ってるから本物だ……」
そう言う涼音の頭を掴み、無言で自らの服に擦りつける涼香であった。
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