水原家にて 24

 水浴びを終えた涼香りょうかは、床に零れた水を雑巾で拭いている。洗った器具は乾燥機に入れている。


 時間を確認すると、まだ三十分も経っていない。それなら髪の毛を乾かそうと思い、洗面所へと向かう。


 服はそのうち乾くだろうから着替えずにドライヤーで髪の毛を乾かす。


 この後は生地を伸ばしてくり抜き、予熱したオーブンで焼けば完成だ。


 一度涼音すずねの様子を見に行こうか、そんな考えが頭に浮かぶが、覚悟を決めて家へ帰ってきたのだ。手ぶらで帰る訳にはいかない。


 髪の毛を乾かし終えた涼香、鏡で自分の姿を確認すると、手首にエメラルドグリーンのシュシュがあることに気づく。


 なぜ今まで気がつかなかったのだろうか、これを使えば髪の毛が濡れることを防げたのかも知らないのに。


 恐らく、クッキーに愛情を込めることに必死で見えていなかったのだろう。そう結論づけた涼香が、シュシュを使って髪の毛を後ろで纏める。


「さあ待ってなさい涼音! 美味しいクッキーを作ってみせるわ!」


 気合十分。残りの作業を終わらせるため、台所へと戻るのだった。

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