家電量販店にて 4

「飽きた」

「早くない⁉」


 家電量販店に入って約三十分、突然そんなことを言い出した涼音すずねに、


夏美なつみは開いていた冷蔵庫の扉を叩き締める。

「うわ乱暴」

「ああ、ごめん。――って早くない?」

「まーあねぇ」


 初めは落ち着いて家電を見るのも悪くないと思っていた。


 思っていたのだが……落ち着きすぎて暇だった。


「なんか静かだとさ、アレ」

「アレ?」

「そういうこと」

「ごめん全く分からない」

「なんで分かんないの」

「えぇ……」


 涼香りょうかと来たのなら、寿命が縮む思いをするのだが、なんやかんや時間を忘れて楽しめたりする。


 しかし、今はその涼香がいない。落ち着けて心臓に優しいが、時間を忘れてしまう程では無い。


 それを夏美に説明しようと思ったのだが、別にしなくていいだろう。


「まあいいや」


 そんな、本当に飽きた様子の涼音に夏美は言ってみる。


「じゃあさ、私が行ってみたいフロアに行ってもいい?」

「いいよ」

「わあ即答! ありがとう、檜山ひやまさん!」

「別に礼を言う程のことじゃないでしょ」


 店の中は涼しいし、適当に付いていくだけなら問題無い。


「だって一緒に来てくれるんでしょ?」

「え、帰っていいの?」

「ダメ!」

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