夏休みのお出かけ編

駅のホームにて 3

 以前同級生と出かけたのは確か数年前、なにかの打ち上げでファミレスに行った時だ。


 それを除けば、涼音すずねが同級生と出かけることなんて、今日が初めてだった。


 嫌で嫌で仕方ないが、どうしてもと頼み込まれたら断れない。涼香りょうかにも強く押されたから余計にだ。


 特段緊張せず、いつも通り適当な服装で電車に乗る。


 集合の時間は十時頃なのだが、集合場所が遠いため、少し早めに家を出る。


 学校の最寄り駅を通り過ぎ、終点近くまで行くと違う線に乗り換えてしばらく。


 向かっているのは、新幹線も停る、高い建物が雑草のように生える都会だ。


 涼香と何度か来たことはあるが、あまりいい印象は無い。確かに買い物が楽しめる場所だし、涼音達がよく行くショッピングモールなど比ではないだが、それ故に人が多い。しかも日曜日、学生だけでなく、休みの人々までもがおり、真っ直ぐ歩けたものではない。


 ようやく集合場所の駅にやって来たが、駅のホームは人でごった返し、とても人と待ち合わせできるものでは無かった。


 なんとか人混みから逃れ、一息ついていると、涼音のスマホがメッセージを受信した。


 着いたことを連絡しようとしたところだったのだが、その必要は無かった。


『着いたよ!』


 夏美なつみも着いたらしい。どこに住んでいるのか知らないが、もしかすると同じ電車に乗っていたのかもしれない。


 涼音か自分も着いたことを伝えようとメッセージを返信しようとすると――。


檜山ひやまさーん!」


 後ろから名前を呼ばれた気がした。


 いつもなら人違いだろうと無視をするのだが、今日はそういう訳にはいかない。重たい息を吐いて振り向く。


 涼音が夏美の姿を確認する。


 夏美は大きく手を振りながらこちらへかけて来ている最中だった。


 目立つから大声で呼ばないでほしいなあ、と思いながらも、夏美がやって来るのを待つ涼音であった。

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