涼香の部屋にて 24

「本当に賢くなったんですかあ?」


 ベッドに寝転びながら、涼音すずねはシャツを着替えている涼香りょうかに聞く。


 水で色の変わったシャツから、通気性のいい体操服に着替える。


「やっぱり体操服が一番ね」


 水を飲もうとして、コップが手から滑って中の水を被ったのだ。多少濡れるぐらいなら着替えないのだが、今回はほぼ全てを被ってしまった。


「心配なら、明日も明後日も、私といてくれてもいいのよ」

「まだなにも言ってませんよ」

「でも、そんな気持ちになっていたでしょう?」

「どうでしょう」


 着替え終えた涼香が、ベッドに腰かける。


 それっぽい雰囲気を出してやって来たが、涼香が寝るのは壁側だ。


「奥行ってくださいよ」

「いいではないの」

「よくないです」

「仕方ないわね……」


 涼香が涼音を引っ掴んで、ベッドの奥へ行く。


 そのまま、涼音は涼香の腕の中に収まる。


「お姉ちゃんね、明日からしんどいことをしなくてはならないのよ……」


 涼香はどこか寂しそうな、決意の籠った声音で囁く。


 それだけで今日はどんなに大変な思いをしたのか察せられる。


「…………」


 しかしそんなことはどうでもよく、涼音は、誰がお姉ちゃんですか、と思っていた。


「ああ、涼音が無視をしてくるわ。意地悪よ、意地悪涼音!」

「自業自得ですよね?」

「涼音が意地悪言ってきたわ! 罰として明日明後日一緒に勉強よ!」

「はあ?」


 口ではそう言いつつも、それも悪くないなと考える涼音であった。

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