水原家の玄関にて 2
菜々美達に礼を言って車を降りて、水原家の玄関を開ける。
「ただいまー」
「寿限無寿限無五劫のすりきれ海砂利水魚の水行末雲来末風来末――」
「えぇ……」
なぜか寿限無を唱えている涼香が出迎える。涼音が困惑していると、後ろから涼香の母がやってきた。
「おかえりなさい」
「ただいま。先輩どうしたの……?」
「知識が抜けないように、寿限無で蓋をしているのよ」
「うん意味分かんない」
いまいち涼香の母が言っていることを理解できない涼音。その様子を見た母が、寿限無を唱え終えた涼香をリビングへ戻しながら言う。
「寿限無って長いでしょう?」
「うん」
寿限無といえば、小学生の時に授業で暗記した記憶がある。確かにあれは長かった。今でも暗唱できる程、印象的な名前だ。
「だから蓋をするにはぴったりなのよ」
「うん意味分かんない」
なにが、だから――なのだろうか?
「まだまだね。早く上がりなさい、ここは暑いわ」
髪を払った涼香の母がリビングへ引っ込む。
やっぱりこの二人は親子だなと、呆れた涼音は、汗をかく前に靴を脱いで――。
「あ、先に手洗いとうがいよ」
洗面場へ向かうのだった。
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