お風呂にて 5

 暑い夏でも、熱い風呂に浸かれば心地良い。


「出た後を考えたくないわね」


 風呂に浸かりながら、一日の疲れと共に嫌なことを吐き出す。


 涼香りょうかは夏の風呂が嫌いであった。


「じゃあ浸からなかったらいいんじゃないんですか?」


 身体を洗いながら涼音すずねが言う。


 全身泡もこ、身体洗いも佳境に入っている。


「違うのよ。お風呂に浸かるのは疲れを取る上でとても重要なことなのよ」


 なにが違うのか分からないが、涼香は風呂に浸かることの重要性を涼音に説こうとする。


「先輩疲れるようなことしてませんよね?」


 しかし涼音は、風呂に浸かっているのに、肌寒くなるような冷たい目線を向けながら言う。


「えいっ」


 言い返すことができない涼香は両手を握り締め、涼音目掛けて風呂の湯を発射する。


「なにするんですか……」


 今から流そうと思っていたから別にいいけれど。


「涼音が悪いのよ」

「えぇ……」


 とりあえずシャワーを涼香に向ける涼音であった。

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