夏休み編 8月

夏休みにて 22

 夏休みのこと。


「見なさい涼音すずね、またそうめんよ」


 目の前に盛られたそうめんを見た涼香りょうかが、助けを求める目をしていた。


 何度目か忘れた今年のそうめん。こうも頻度が高いとさすがに飽きてしまう。


「そうめんですね」

「嫌ではないの……」

「まあ、はい」


 嫌だ嫌だと言っても、もう用意したのだから仕方が無い。


 恐ろしいものを見るような表情の涼香。


 だけど涼音は気にしない。冷蔵庫からケーキの入った箱を取り出すと、その表情のまま固まっている涼香の目に入る場所に箱を置く。


「デザートありますよ」

「そうめんって美味しいわよね」


 さっきまでの態度はなんだったのか、ちゅるちゅるそうめんを食べる涼香。


 あまりの変わり身の速さに、涼音はおかしくなって笑ってしまう。


「どうして笑うのよ」

「いや、別にそうめん食べないとケーキ食べれないって言ってないんですけど」

「出されたものは食べるわよ」

「そうですよね」


 涼音も席に着き、そうめんを食べ始めるのだった。

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