水族館からの帰り道にて 2
「随分と運転が様になってきたではないの」
「どこ目線なの?」
夕食を終えた四人は、今度こそ帰路につく。
太陽は殆ど沈み、これならば運転していても眩しくない。暗いのはそれはそれで怖いのだか、眩しいよりかはマシだ。
国道を真っ直ぐ走ればそのうち各々の家がある場所へ着く。
「先に
家への距離で言えば、一番近いのは菜々美、次にここね、涼香と涼音は今いる場所からだと一番遠い。
「ありがとうございます」
――――。
それから車に揺られること約一時間、太陽は沈みこんで夏の夜がやってきていた。
「ありがとう菜々美、楽しかったわよ」
「ありがとうございました」
「私の方のこそ、楽しかったわ」
「二人ともばいばい」
涼香と涼音が降りると、車は再び走り出す。
車が見えなくなるまで見送った後――。
「さて、お風呂に入りましょうか」
殆ど屋内にいたとはいえ、外に出た時にかいた汗を早く流したい。
「そですね」
それは涼音も同意見だったらしく、あっさりと頷いて、
「待ちなさい。どうして家へ帰るのかしら?」
家へ帰ろうとする涼音に待ったをかけた涼香が、心底不思議そうに首を傾げる。
「え、家だからですけど……」
なにを不思議がっているのか、なんとなく分かるけど分からない涼音が当たり前の言葉を返す。
「一緒に入ってくれないの」
「今日はいいじゃないですか。あ、今日は自分家で寝るんで。それじゃおやすみなさい」
「なんですって……⁉」
恐ろしいものを見たような表情をする涼香。
そして背を向ける涼音。
追い縋る涼香の手は空を切り、涼音には届かなかった。
ドアの閉まる音が聞こえ、今この場には涼香しかいない。
滴り落ちるのは汗か涙か。目に染みるから汗だ。
「意地悪!」
近所迷惑にならない程度の音量で、涼香は叫ぶのだった。
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