ラーメン店にて 3
「そろそろ帰りましょうか」
そう言って
「そうね、あまり長居するのも良くないし」
まだ客足は途絶えておらず、むしろ四人が来た時よりも増えていた。
食事を終えているのに、席を占領するのはよくない。
「私の奢りよ、先に戻ってなさい」
レジへ向かおうとする涼香を、
「いや、自分の分は出すわよ?」
「わたしも大丈夫だよ?」
しかし涼香は髪を払うだけ、悠然とレジへ向かう。
「なに誤魔化してるのよ」
そう言って菜々美も席を立つ。それに続いて
レジに着いたら既に涼香が精算を始めていた。
表示された金額を財布から出し、釣りを受け取る。
「ありがとうございます――行くわよ!」
礼を言って三人に出るよう促す。
ご馳走様でしたを四人はそれぞれ伝えて外に出る。
冷房の無い外に出ると、店の中に戻りたくなるが、その気持ちを堪えて車を目指す。
「ねえ涼香、レシートは無いの?」
「あるけど、別にいいわよ。車を出してもらったのだし」
「そういう訳には――」
「あたしの分は出さなくていいですよ」
菜々美の言葉を遮って涼音が涼香にお金を渡す。
「はい、
そして菜々美にもお金を渡す。
「いやいや! そんな大丈夫よ!」
「そうだよ涼音ちゃん。片道分はわたしが出すから。それに涼香ちゃんも、わたしの分はわたしが出すよ」
「ここねも……いつも大丈夫だって言ってるのに」
「そうね、ありがたく受け取るわ」
なかなか受け取ろうとしない菜々美に対してすぐに受け取った涼香。
「ちょっと待って、はい涼香、私の分!」
「いいと言っているでしょ?」
しかし菜々美のお金は受け取らない。
「えぇ……」
「どうしてそんなに申し訳なさそうなのよ」
涼香が眉尻を下げて言う。
「いつも言ってるけど受け取ってね」
「タダ乗りは嫌ですから」
涼音もここねも引く気は無いらしい。
菜々美とて、受け取ってもいいことぐらいは理解しているが、理解していても申し訳なさというものは消えないのだ。
「……分かったわよ」
渋々受け取った菜々美は財布に受け取ったお金を入れるのだった。
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