水族館からの帰り道にて
「楽しかったわ。
「ありがとうございます」
水族館からの帰り道。今日一日の感謝を伝えた
「眩しすぎるわ‼」
しかし西日に照らされ、それどころでは無かった。
涙目になりながら駆け抜ける高速道路、菜々美に気を使ってか誰も口を開かない。
だけど暇なため、後部座席に座っている涼香は、隣で座る涼音にちょっかいをかけていた。
涼音の腕を指先で、触れるか触れないかの位置でサッと撫でる。
鬱陶しそうな表情になる涼音、しかし涼香は止めない。
腕を引いて距離を取った涼音。涼香は距離を詰めようとして、シートベルトに阻まれる。
後ろを振り向いたここねが困ったように笑う。
その隣で菜々美は前方を睨みつけながら後悔する。
夕食を食べて、暗くなってから帰った方がよかった。
「菜々美ちゃん。無理しないで途中で休んでも大丈夫だからね」
「降りるわ‼」
ここねの言葉に甘え、出口へと向かう菜々美。
涼香と涼音も乗せてもらっている立場だ、異論は無い。
料金を払って無事に出た後、近くのコンビニで休憩する。
「あぁぁ……生きてる……」
「お疲れ様」
「なにか買ってくるわ。なにがいい? 言いなさい」
「なんで上から……?」
ポシェットから財布を取り出した涼香が車から出て行こうとする。
「菜々美ちゃんは甘い物がいいと思う。私は持ってるから大丈夫だよ」
「分かったわ」
そう言って涼香が車から出て行く。
「あたしも行きます」
すぐさま後を追う涼音。
二人残された車内で、ここねは力尽きる菜々美に手を伸ばす。
エンジン音の無い静かな車内、衣擦れの音だけが聞こえる。ここねの指先から菜々美の髪の毛が零れる。
「えへへ……可愛い」
「ううぅぅぅぅぅぅう……!」
どことなく甘い雰囲気が車内を満たす。
一方その頃――。
「甘いものと言えばこれよ‼」
そう言って涼香が掲げたのは塩むすびだった。
「確かに噛めば噛むほど甘みが出てきますけど」
「でも塩むずびはしょっぱいかしら……?」
「夏だから塩分は大切だからいいと思いますよ」
「そうよね! これにしましょう!」
そう言って野菜ジュースを取る。
「涼音はなにか欲しいものある?」
「はい」
涼音は箱に入った個包装のチョコレートと水を持ってくる。
二人でレジへ向かい、会計を終えると車へ戻る。
涼香と涼音が車へ戻ると菜々美が復活していた。
後部座席に乗り込んだ二人は買ってきた物を手渡す。
「甘い物よ」
そう言って涼香は菜々美に塩むすびを渡す。
「えぇ……」
「糖質よ! 脳のエネルギーになるわ!」
「うん……ありがとう」
「一応チョコもありますよ」
そう言って涼音はチョコレートを渡す。
「ありがとう涼音ちゃん」
ありがたくチョコレートを受け取った菜々美は、早速チョコレートの箱を開けて食べる。
「どうして塩むすびは食べないの⁉」
恐ろしいものを見たような表情をする涼香。
涼音の、そりゃそうでしょう、という目を無視して更に言う。
「
「本当にそう言っていたの?」
「言っていたはずよ……多分」
「自信ないんだ……」
そう言って笑ったここねに野菜ジュースを渡した涼香が、菜々美の手から塩むすびを奪い取る。
「私が食べるわ」
自分が食べるのなら、鮭か明太子とかにした方がよかった。そう僅かな悔しさと同時に塩むすびを噛み締める。
適度な塩と、噛めば噛むほど米の甘味が出てきてこれはこれで美味しい。
その様子を見て買った水を一口飲んだ涼音が口を開く。
「えっと……帰りは下の道で帰ります?」
菜々美からチョコレートを貰ったここねがそれに返す。
「うん。そうした方が楽だと思う。ね、菜々美ちゃん?」
「時間は少しかかると思うけど、そうやって帰らせてもらうわ」
「分かりました」
塩むすびを喉に詰めたらしい涼香が、涼音の持っていた水を取ったが、割とよくあることなので気にしない。
「夕食は……どうしましょうか?」
苦しそうな声で涼香も会話に参加する。
今ならまだ夕食を作る前だろうし、迅速に決めたかった。
「どこかへ寄りましょうか」
「さんせーい」
菜々美はどこかに寄るつもりらしく、ここねもその意見に賛成だ。
「らしいですよ」
「分かったわ。涼音も連絡は入れておきなさいよ」
「はーい」
そうと決まれば早速どこへ寄るかを調べなければならない。
四人は夕食の案を出し合うのだった。
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