商業施設にて

「ということでやって来たわ……お昼ご飯に!」

「買ったらすぐ入れるもんだと思ってました」

「でも人が少ない方が私は助かるかしら」

「ゆっくり見られるね!」


 四人はチケットを買いに行ったが、日時指定で入館らしく、しばらくの間は入館できなかった。


「人結構多かったねー」

「平日だから少ないと思ったけど、まさか外国人があんなに来てるなんて……」

「それは日本を代表する水族館だからよ! 世界レベルよ!」

「観光客には土日とか関係ないですもんね」


 四人の入館時間は午後一時からだ。


 九時頃に家を出て約一時間、そこから車を停めてチケットを買うために並んで今に至る。


 並ぶだけでも暑くて汗をかいてしまい、チケットを買ったら四人とも早足で隣の商業施設に向かった。


「とりあえずお昼ご飯を食べたいわね」


 入館時間まで一時間以上ある。しかしお昼を跨いでしまうため、入館前に昼食は済ませたい。


 涼香りょうかを先頭に、飲食店が並ぶゾーンにやってきた。


「中に入る系ですか?」


 涼音すずねが涼香に聞く。


 この施設にはフードコートもあるのだが、涼香はそこには目もくれずこの場にやってきた。


「せっかくなら魚を食べたいのよ」

「せっかくもなにも魚ばかり食べてません?」


 涼音の言葉に涼香は髪の毛を払うだけでなにも返さない。


菜々美ななみとここねはなにか食べたいものでもある?」

「特に無いかしら……ここねは?」

「無いよ。菜々美ちゃんと一緒ならなんでも大丈夫」


 その言葉に頬を染める菜々美だったが、前を歩く涼香には見えていない。


「なら決まりね!」

「え、あたしのリクエストは?」

「なんでもいいのではないの?」

「まあそうですけど」


 ここねみたいに、涼香と同じならなんでもいい、とは言えない。


「なら決まりね、それっぽいお店を探すわよ!」

「「えぇ……」」

「魚が食べられるところだね!」


 てっきり魚が食べられる店に向かっているのかと思ったのだが、どうやらまだ見つけていないらしい。


「フロアマップとかに乗ってないんですか?」

「甘いわね涼音、自分達の足で探すのが楽しいのよ」

「そうですね」


 そうやって四人は魚の食べられる店を探すことにするのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る