夏休みにて 20

 もたれかかってくる涼音すずねの頬をもにゅもにゅしながら、涼香りょうかは涼音のスマホを覗き見ていた。


「冷たいんですけど……」

「今は夏よ? 冷たくてもいいではないの」

「確かに」


 動画に集中している涼音は適当に返した。涼香の言っていることも分からないこともないと思ったのだ。


「あら、美味しそうなカニではないの」


 動画が広告動画に変わり、それを見た涼香は弾んだ声で言うが、広告動画に興味の無い涼音は躊躇い無くスキップを押そうとした。


「待ちなさい。スキップを押そうとしないで!」


 慌てて涼香がそれを止める。


「いひゃいいひゃいいひゃい‼」


 頬を上に引っ張られた涼音の声が響く。


 しかしそれで止まる涼音ではない。


 容赦無くスキップを押した。


「カニが⁉」


 動画は再び手作りアイスの動画に切り替わる。


「そんな……」


 恐ろしいものを見たような表情をする涼香。


 そして、早く放せと涼香の手を叩く涼音であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る